サピエンスからルーデンスへ
地上ではないどこか。人間の手がまだ触れていない場所。
そこに立ち、遥かを見わたす存在。
宇宙服でもあり、甲冑でもあるような外装が包んでいるのは、地球に誕生したあらゆる生命の進化の結晶。
未知の時空を探索する無限の好奇心を推進力にして、“それ”はどこまでも歩んでゆく。
手にしているのは、何かを制するための槍ではなく、到着を刻むための旗。
想像できないことを創造して、遊びで世界を広げていきたい。
“それ”は、そんな思いから誕生した。
私たちは、遊ぶ人、ホモ・ルーデンス。
2015年の設立とともに登場した、コジマプロダクションのシンボル「ルーデンス」。
それは長年クリエイティブの現場をともに歩んできた小島秀夫と新川洋司が、その経験とセンスで命を吹き込んだ存在だった――。
2022年12月、コジマプロダクション7周年を迎え完成した新オフィスには、これまでのものより確かな存在感を放つ、「1/1(等身大) ルーデンス」が設置された。
今回、この「1/1ルーデンス」の完成を記念して、新たに収録したコメントを追記するとともに、5周年記念に公開された新川洋司のインタビューを再掲する。
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-QUESTIONS FOR YOJI SHINKAWA-
新オフィス エントランスの、「1/1 ルーデンス」。 仕上がったものを見て、どう感じましたか?
存在感も出てますし、確かなリアリティさも感じられますね。よく仕上がったなと思います。
会社のエントランス等に飾られている1/2サイズや、1/6スケールフィギュアなども作りましたけど、やっぱりディテールというか、全体的な雰囲気は1/1ならではの説得力がありますね。
なかなか会社に来て、実際にこれを見れる人は少ないですけど、見た人がびっくりしてくれるものに仕上がったんじゃないかなと思います。これから来る人の反応が楽しみです(笑)
制作・監修時のエピソードはありましたか?
CGデータをベースに作成してもらったんですけど、まずパーツ数が約500パーツあるんですね。
細かいパーツ単位では問題ないかなと思っていたんですけど、全てのパーツをくみ上げる段階で、色々と大きいならではの弊害も出てきました。重心の取り方、パーツ同士の干渉などは、すり合わせが大変そうでしたね。
けっこう無理な調整も注文しましたけど、布の合わせとか、質感の調整も何回かさせてもらって、最終的な仕上がりを見るまで、少し不安もあったんですけど、かなりクリアできたんじゃないかなって思います。
何より、現場の皆さんは凄く楽しそうに対応してくださったみたいで良かったです。
ゲームもそうですけど、何かを一から作り上げるという作業はとても楽しいことだと、あらためて感じました。
*YouTube Video Links
MAKING OF 1/1 LUDENS - 自由廊 x KOJIMA PRODUCTIONS :https://youtu.be/uJp5zQHmaAI
――以下、5周年記念として掲載したインタビュー記事より再掲
ルーデンスのキャラクターやコジプロのロゴマークは、どのような経緯で出来たのでしょうか?
ロゴとルーデンスのキャラクター、どっちを最初に作ったのか、記憶はちょっと曖昧ですね(笑)
設立初期に、まずコジプロのロゴマークを作り、宇宙服と騎士をミックスしたようなキャラクターも考えました。騎士というと “戦う” イメージがありますが、ルーデンスは、デジタルのエンタテインメントを突き詰めていくキャラクターです。ですので、探検家のようにも見えるように意識しています。
最初にデザインしたアイデアを発展させて、騎士と宇宙服とのバランスを取りながら今のデザインにたどり着きました。途中でコンセプトを変えたりはしていませんね。最初から騎士だけではなく、ミックスしたものを描き始めていました。見る人がどう受け取るかはそれぞれの感覚によって変わるかもしれませんが、両者の象徴的なイメージを表現できるようにデザインしました。
もう20年以上も前なんですが、昔、監督に出会った当時、開発部署のマークを作りたいという話が出たんです。その時すでに、監督には今のようなキャラクターとロゴマークの原型になるイメージがありました。それを改めて思い出し、作成する際の原型にしたとも言えますね。
ルーデンスは剣ではなく、旗を持っていますね。 これに込められた意味はどんなものでしょう?
「騎士でもあるわけだから、剣を持たせてみよう」 と考えスケッチしたのですが、監督から「戦うわけではないので、剣や銃などの武器を持たせることではなく、別のものを持たせたい」 というお話が出て、旗はどうか? というアイデアに行きつきました。
監督のイメージには、デジタル世界を開拓していく、開拓先に旗を立てるという意味もあったんだと思います。 人類が初めて月面に立てた旗を思わせたい、という意図もあったかも。 いろいろなイメージや、インスピレーションが詰まっているんです。
ルーデンスのスーツについている金色の円盤パーツは、何を表していますか?
これは監督からのオファーですね。「ロゴの中にチューリングマシンのような要素を入れたい」 というものでした。 計算機みたいなものが体の中に付いているようなイメージです。
チューリングマシンというのは、イギリスの数学者のアラン・チューリングが考案したもので、現代のコンピュータの原理になったものです。その概念を金色の円盤として表現してみました。
それがルーデンスの体に付いている。 つまり、チューリングマシンのような役割を果たす計算機がスーツに内蔵されているようなイメージで作成しました。 それが回転しながら、様々なものを検索、制御するような設定になっています。
スタジオが今後成長し、発展するにつれて、ルーデンスもまた違った姿に変化、進化していくのでしょうか?
ルーデンス自体は基本的に変わらないと思いますが、アップグレードパーツみたいなのは作っていきたいですね。
例えば、5周年のために作った新しいビジュアルには、背中にブースターみたいなバックパックがついてます。 これまで背中部分は、宇宙服でいうところの生命維持装置だったのですが、さらにその上に、追加のブースターパックを足しました。
実在する人がモデルでしょうか、それとも抽象的な“人”を表現しているのでしょうか?
特定の誰かというわけでも、具体的な 「人物」 イメージがあるわけでもありません。つまり、スーツの中の人物に、誰もがなれるのです。
全ての人があのスーツを着て、冒険に旅立てるといいですよね。
ロゴマークは公開後、すぐに多くの人に認知されましたね。どうしてだと思いますか?
不思議ですよね。ドクロだから・・・かもしれないですよ (笑) ダイバーシティ(多様性)がうたわれる世の中に、響くデザインだからですかね。さまざまな想像を掻き立てるのかもしれないです。
スタジオを立ち上げた時に、最初にお目見えしたマークでありシンボルだったから、印象深く残っているのではないでしょうか。
ロゴマークのデザインに、ドクロを起用した意図は何ですか?
僕は、ドクロに対してネガティブなイメージは持ってません。 人間がみんな持ってるものですし。
どんな肌の色であろうと、性別であろうと、人種だろうと、ドクロ (頭蓋骨)はあります。人間を表現してるものだと思っています。ロゴマークは、人間の多様性とともに、普遍性を意味しているんです。
その他エピソード
最初、会社のロゴを作ろうとした時に、監督から「バレエダンサーがジャンプしているところがいい」というアイデアが出ました。 バレエは 「総合的なアート」 であり、それをデジタルでやりたいという意味が込められてました。ですが、このアイデアを自分でうまく咀嚼できなくて、苦労しました。
そんな、いくつか提案していたアイデアの中に、昔、監督がイメージした「デジタル世界の宇宙服とカッコいい騎士」を組み合わせたイメージがあって、そこに監督からチューリングマシンや旗というアイデアを加えて、今のキャラクターになっていきました。バレエダンサーのイメージが完全になくなりましたけど(笑)
デジタルの世界も好きですが、手で触れられるアナログなものも好きです。
ですので、グッズにコジプロのロゴが使われるのは嬉しいですし、いつも楽しみにしています。
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YouTube Video Links
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MAKING OF 1/1 LUDENS - 自由廊 x KOJIMA PRODUCTIONS
https://youtu.be/uJp5zQHmaAI -
大塚明夫の「おお散歩」KOJIMA PRODUCTIONS 新オフィス探訪
https://youtu.be/USgMmBO2Z18 -
KOJIMA PRODUCTIONS 新オフィス トレーラー
https://youtu.be/ahkySyCnTdE